<STORY>BL彼女とシナリオライター #6

あらすじ

女性向けソーシャルゲームのシナリオライターとして働く「美穂」とその友人「花鈴」の物語。ゲームのグッズの片付けをしながら、はじめて出会った日のことを思い出す。

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第4話
第5話

第6話

「ねぇ、花鈴。結婚っていつなの?」

私の口から自然に言葉が出てくる。

「え……? 半年後だけど……」

半年後、あるのは結婚式だけじゃない。

「花鈴。私にはこれ、今は捨てられない」
「今は……?」

私は花鈴の目を真っ直ぐに見つめた。

「三周年のイベントがあるでしょ。そこまで一緒に見届けたい」

河西さんが言っていた、三周年のゲーム内イベント。もしかしたら、その内容は。

「……でも、周年イベントって、毎年八×円でしょ」

八重と円香、一番人気のカップリングの名前が出る。今までの周年イベントがこのカップリングのストーリーだったのは確かだ。

「でも……今年は蒼×旭かもしれないよ」
「なんで、美穂がそんなこと言うの?珍しい」
「私、花鈴に花恋続けてほしい」

ゴミ袋に入りきらず、花鈴の部屋はまだグッズがひしめいている。それが少しずつ、私の手で崩壊させられていく様を見るのはつらかった。そこにあるのは、全て花鈴の熱量そのものだったからだ。

「花恋、諦めてほしくない」
「美穂……」

花鈴の頬に涙が伝った。

「私だって、諦めたく、ないよ……!」

花鈴は涙混じりの声で訴える。

「でも、いつかやめなきゃいけないんだもん。今やめたって、同じ……」
「同じなら、周年イベントの後にして」

私はぴしゃりと花鈴を制する。

「周年イベント、花鈴とやりたいから」

花鈴は力なく笑った。

「……そうだね。周年イベントくらい、私もやりたい」

花鈴の目から涙は止まっていた。

「約束だよ、花鈴。一緒に周年イベントやろう」

花鈴もまた、熱を取り戻したように強く頷いた。

*

「あの」

翌日、私は河西さんに話しかけた。河西さんに私から声をかけたのは、いつぶりだろうか。

「どうしたの、早坂さん」

彼女も少し驚いたようにこちらを見た。私は息を整えて言う。

「周年イベントのプランナー会議、私も参加していいですか?」
「えっ……?」

河西さんは目を見開き、私の顔を見る。

「いい……けど、どうかした?」
「いえ……。ちょっと、どうしても参加したくて」

彼女は訝しげに私を見た後、共有スケジュールに私の名前を登録してくれた。

「明日だから。よろしくね」

河西さんはそれだけ言うと、私に何も聞くこともなく、パソコンに向かった。私は、美穂のために、できる限りのことをしたいと思った。

(つづく)

著者紹介

野溝さやか
9月12日生まれ、ギャルゲー大好きシナリオライター、脚本家、演出家。特にヤンデレが大好物。執筆作品「DEAD OR ALIVE6」など。
http://end-up-roll.main.jp/?page_id=107
Twitter @sayaka_sophians

企業概要

ヴァンパイア株式会社
2019年7月設立、代表取締役 加藤洋平
http://www.vampirekk.com/
Twitter @vmpkk